2016年7月15日金曜日

生命は

       

        生命(いのち)は
        自分自身だけでは完結できないように
        つくられているらしい
        花も
        めしべとおしべが揃っているだけでは
        不充分で
        虫や風が訪れて
        めしべとおしべを仲立ちする
        生命は
        その中に欠如を抱
        それを他者から満たしてもらうのだ

        世界は多分
        他者の総和
        しかし
        互いに
        欠如を満たすなどとは
        知りもせず
        知らされもせず
        ばらまかれている者同士
        無関心でいられる間柄
        ときに
        うとましく思うことさえも許されている間柄
        そのように
        世界がゆるやかに構成されているのは
        なぜ?

        花が咲いている
        すぐ近くまで
        虻(あぶ)の姿をした他者が
        光をまとって飛んできている

        私も あるとき
        誰かのための虻だったろう

        あなたも あるとき
        私のための風だったかもしれない


        吉野弘 『風が吹くと』(1977年)より 

6 件のコメント:

  1. Ahah, this is my second favorite poem :) - terumi

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  2. Hey, good to hear from you, Terumi. Well, I'm not sure if you remember this, but you are the one who introduced me to this poem! I shared this here, thinking about you. In a note, you wrote how you came across this poem, fell in love with it, and read it so many times that you were able to recite it blindfolded :) Can you still? Sending much love,
    Daiyu

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    1. Oh, i've completely forgotten that story, sorry:( Anyway, it has been a long time since I've visited your page (maybe 2 years..) but the other day, when I was writing my master's thesis in the library, you just came up to my mind and I found that poem, which made me very surprised! That is cool because you remind me that there are still "small miracles" around me. I am very happy to share other favorite poems when I see you next time:)
      Terumi

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  3. Would love you to. "Small miracles"... agree completely. Wishing you a beautiful day full of small miracles :)
    Daiyu

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  4. 感受性が豊かだと、万物から様々なメッセージを受け取り、表現できるものですね。心に染み入る詩です。自分と同じ人はいない、長所も短所もある。長所は伸ばし、短所は補い合い、適材適所で各自が輝くことができるように。こんな夢のような現実を素敵な指導者は成し遂げる。実際にみること体験できたことに感謝しております。自分も風や虻になれますように。自然界同様、このような環境にいるとき、人は幸せを感じる気が致します。

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  5. 大裕さん、こんにちは。こんな素敵なブログがあったんですね。土佐町での合宿で大裕さんがブログを書いていることを知り、ググッて見つけました。丸さんのエピソードもズシリと来ました。

    僕が「自然からの学び」の真髄だと思っているのは「この世の中に役に立たないものは何も無い」ということです。人はもちろん、あらゆる生き物はほかの生き物と関わりを持っていますし、ある生き物の排泄物は、別の生き物にとっては食料になります。動物、植物、だけでなく、おそらく、その辺に転がっている石ですら、きっと何かの役に立っているのだと思います。

    「役に立たない」という言葉は「私にはまだ、そのものが持っている価値を見出すことができていない(未熟者の告白)」と言い換えるべきだと思っています。・・・自戒の意味をこめて。

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