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2013年7月22日月曜日

Something Beautiful 9:「俺らはイスラム教徒だから」


マンハッタンにあるコロンビア大学から公園を隔てたハーレムに引っ越してきて、はや4年が経つ。僕はこのコミュニティーが大好きだ。

何よりも、人がいい。

主にアフリカ系アメリカ人主体のコミュニティーだが、セネガルを初めとした西アフリカからの移民も多く、日曜日になるとキラキラと色鮮やかなアフリカの民族衣装に身を包んだ人々が通りを賑わす。それに比べ、アジア人はまだほとんどいない。

僕は、「行きつけの店」を持つのが好きだ。ここら辺でもたくさんある。

ただ、飲食店とは限らない。

南米系のおばさんが営むクリーニング店、Fredrick Douglasと114丁目にあるアフリカ系移民のたまり場のセネガルの食堂、Manhattan116丁目のデリ(日本でいうコンビニ)、ドイツ人とセネガル人が共同経営するビールの店Bier InternationalFredrick Douglass113丁目)、他にも何件かある。

置いている品物も勿論大事だが、たいていは、人の温かさで選ぶ。

お金を払う時や、料理を待つ時の、ちょっとした会話が嬉しい。コミュニティーの良さを感じるひと時だ。

こんな人間関係が、窮地を救ってくれる時もある。

以前、昼食を買いにセネガルの食堂に寄った時にクレジットカードが使えなかったことがある。ランニングの帰りだったために現金も無く、焦った。もう料理は包んでもらっていたし、困ってしまった。

セネガルおばさんの対応はシンプルだった。

「代金は今度でいいわ。」

そんなことが、他の店でも何回かあった。落とした財布がちゃんと自分の手元に戻ってくることで知られる日本でも、こんなことは珍しいんじゃないだろうか。ニューヨークのような世界有数の大都市にして、こんなにも情緒豊かなハーレムは、とてもスペシャルだ。

つい先ほどもこんなことがあった。

昨年に続き、今年も7月中はボストンで勉強する妻の所に、子ども達を連れて行った。高速バスでボストンからNYに着き、すぐタクシーを拾った。

いざカードで支払いをしようとしたら、またしても何らかの理由でカードが使えなかった。運転手さんに頼んで、116丁目のデリまで行ってもらい、ATMで現金をおろすことにした。

カードが使えないのも当然だった。残額が足りなかったのだ。

カードも使えなければ現金も手元になく、タクシーの運転手さんは子ども達と外で待っているという信じられない状態。残された道は一つしかないように思えた。

一か八か、顔見知りのデリのおじさんに、事情を説明してみた。

これこれこういうことで、申し訳ないがお金を貸してくれないだろうか。

イエメン出身のそのおじさんは躊躇せずにこう言った。

“No problem. How much?”

こうして$40彼に借り、無事タクシーの運転手さんに払うことができたのだ。

客が逆に店から金を借りるなんてこと、前代未聞だ。借りておきながら、自分自身、びっくりした。

子ども達をおいて、すぐさま家にあった現金を持っておじさんの所に引き返した。

ついでにビールも買い、「ありがとう」と言って$10手渡そうとした。でもおじさんは頑として受け取らなかった。

そのおじさんの言葉が印象的だった。


“We are Muslims.”
「俺らはイスラム教徒だから。」


アラーの神に感謝したい。



2011年1月13日木曜日

Something beautiful 8 ~街角のプロフェッショナル~

 バーを出たら外は大雪だった。

一軒目を出た時に降り始めた雪は、いつしか10cm程積っていた。

夜10:30をまわっていただろうか。

その日出会ったばかりの素晴らしい友人に別れを述べ、雪の中を歩いていたら無性に腹が減った。

さっき食べたあの肉厚バーガーはどこへ行ってしまったのか。

途中、一瞬迷ったが、わざわざ110th とColumbusの大きな交差点を渡り、開いてるか開いてないかもわからないピザ屋に立ち寄った。

客は誰もいなく、イスは全て机に上げられていた。



   “Are you guys still open?” (まだ開いてるのか?)



と僕が訊くと、二人いた店員の一人がジャケットを脱ぎながら、“OK.”と気のない返事をした。

スライスをオーダーすると、その店員が一枚切ってオーブンに放り込んでくれた。

白人の30代かと思われる兄ちゃんで、アクセントから察するところではイタリア系の移民だろうか。ハーレムでは珍しい。

何時に閉まるんだ?と訊くと、壁の時計を見て、あと2分だと言った。

住んでるのがここら辺だといいけど、と雪を心配して僕が言うと、ブロンクスだと教えてくれた。

この雪の中ブロンクスまで帰るのかと思うと気の毒になり、それは悪かったと言ってピザをオーブンから出すように伝えた。

すると、彼は迷わずNoと断り、こう言った。



   “Either you do it right, or you don’t.”
(やるんだったら正しくやる、そうでないんだったらやらない、そのどちらかだ。)



 外に出た僕は、歩きながら熱々のピザをほおばった。

 そのピザのおいしかったこと!

2011年1月11日火曜日

Something beautiful 7 ~All god’s children~

 最近、日曜日によく子どもたちをゴスペルに連れて行く。間違いなく、ハーレムに住む醍醐味の一つだろう。僕が行くのは、116thとAdam Clayton Powell Jr. Blvd (7th Ave)の交差点にあるバプティスト教会。次女の美風をスリングに入れ、長女愛音はベビーカー。急いで歩けば10分もかからない。



 この前の日曜日も行った。着いた時には既にミサが始まっていたので、僕らは2階席へ。係の人が気をきかせて、子どもでも見やすい席へ案内してくれた。来ている人たちはほとんど黒人で、白人もパラパラいるが、いかにも観光客らしくキョロキョロしている。アジア人などほとんどいない。僕が愛音の手を引いて入って行くと、皆優しい笑顔で歓迎してくれた。



 音楽が始まると愛音はいつも釘づけになる。盛り上がってくると自然に立ち上がり、拍手したり踊ったりしている。美風も僕の膝の上で敏感に音楽に反応する。



 いつも教会の中はすごい熱気だ。ど迫力のゴスペル隊のエネルギーがすぐに観衆に伝染し、皆歌ったり踊ったり両手を上げて神を崇めたり。牧師の話も、徐々に上がり調子になり、しまいにはマシンガンのようになる。ああ、黒人のラップはここからきたのかとさえ感じさせる。




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 一週間に一度、こうして一堂に集まって、歌を歌い、聖書を読み、神に感謝する…。何度も言うように、僕は特定の宗教を信じてはいないが、こうしてゴスペルに来る度に思うのだ。何てすてきな休日の過ごし方だろう。



 ミサが終わり、3ドルを寄付の封筒に入れ、外に出た。



 帰り道、教会でもらったマーティン・ルーサー・キングJr.牧師のうちわを楽しそうに振る愛音を見て、黒人のおばちゃんが優しく言った。



              “All god’s children.”


2010年6月17日木曜日

Something beautiful 6 ~ ビギン 『三線の花』 ~




 僕が夜、子守唄として子どもに歌う歌は、なぜか沖縄や奄美の歌が多い。これもその一つだ。ビギンの歌からは、そこに暮らす人の表情、息づく自然や昔ながらのしきたり、そして何よりも自分を育ててくれた島への愛情が伝わってくる。


 沖縄の人々に島人としてのプライドを与え、彼らからこよなく愛されているビギンが僕も大好きだ。他にも、 『島人(しまんちゅ)の宝』 や 『防波堤で見た景色』 などの名曲がたくさんある。 『オジー自慢のオリオンビール』 のライブ映像は愛音のお気に入りだ。歌に合わせて 「あいねはぎゅーにゅ~でありカンパイっ!」 とやっている姿はなかなか微笑ましい。

 Wishing you a wonderful day...

                                大裕

2010年4月16日金曜日

Something beautiful 5 ~ 「たいようしゃん その2」 ~



セントラルパークで



 前回紹介した「たいようしゃん」、実は他のバージョンが

あることを妻が教えてくれた。

 いつの間にか真っ暗になった窓の外を見て、愛音が言ったそうだ。

   「あれ? たいようしゃん、ねちゃ(っ)たのかな。」


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太陽が出ていないということに関しては曇りも夜も変わりはない。
でも、ちゃんと朝と夜の違いが分かっていて、その違いを
2歳の愛音なりに理解しようとしていることに妙に感動した。

   たいようしゃん、今頃どんな夢を見ているのだろうか…。
Posted by Picasa

2010年4月13日火曜日

Something beautiful 4 ~ 「たいようしゃん」 ~




朝起きて、愛音と窓を開けると外は曇りだった。


「太陽さんいないねぇ。」 と僕が言うと、愛音がこう答えた。


「そおね~。たいようしゃん、おうちかえ(っ)ちゃったかな~。」




明日また、たいようしゃんが遊びに来てくれますように…。

2010年4月6日火曜日

Something beautiful 3 ~One Step Closer~


"One Step Closer" by Michael Franti & Spearhead

This is something my friend Damian has shared with me.
In doing so, he said, "Spread the love!!"

2010年4月4日日曜日

Something beautiful 2 ~Tracy Chapman's "Fast Car"~



 皆さんはこの曲をご存じだろうか?90年代、僕が大学生の頃に出会い衝撃を受けた曲だ。これは彼女のデビューシングル、Fast Carという曲で、この曲を含む彼女のデビューアルバム、Tracy Chapmanは1988年のグラミー賞に輝いた。僕にとっても思い出深いCDで、今でも時々聴きたくなる。




オハイオ州クリーブランドに生まれ、貧しい母子家庭に育った彼女が歌う曲は、街もモラルも荒れ果てたアメリカのスラムの情景を鮮やかに描き出す。



人種、貧困、暴力、無力感、自由、正義…。アメリカ社会の根底にある難しいテーマに次々と真正面から向き合う彼女の姿に多くの人が感動し、彼女の音楽は今でも人々を動かし続けている。



訳すとどうしてもチープになってしまうので、是非英語の歌詞を噛みしめて聴いて欲しい。



 これが今日、僕があなたと分かち合いたいことだ。

2010年2月21日日曜日

Something Beautiful 1 ~ 愛音と三日月 ~




 家族で近所のスーパーに買い物に行った帰り道。

ふと愛音が夕空を指差してかん高い声をあげた。



    「みてー!」



見上げるときれいな三日月。



    「お(つ)きしゃん!!」



そして、



    「うご(い)てる!わあぁっ!!」



大喜びでお月さまと駆けっこをする愛音。

僕も、琴栄も、胸のおぶ紐に入っている美風も、みんなの心が

あったかくなった気がした。神様に感謝したくなる、そんな瞬間だった。

2009年9月19日土曜日

Something Beautiful ~花~




 今日は歌を一曲紹介しようと思う。

 中孝介(あたりこうすけ)の『花』を知っているだろうか。2007年に発表されたものだが、僕がこの曲に出会ったのはつい最近のことだ。YouTubeで彼がなんとも丁寧にこの曲を歌う姿に心打たれた。中孝介は、鹿児島県奄美大島の民謡出身の歌手だ。

 奄美民謡と言えば、元(はじめ)ちとせのあの独特な歌声を思い浮かべる人も多いのではないだろうか。奄美のシマ唄は世界的な大ヒットを飛ばしたフランス出身のグループ、Deep Forestが元ちとせをサンプリングしたことでも注目されたが、日本が世界に誇ることのできる民謡だと思う。

 音楽は、奏でる人の想いと共に、その音楽を創り出した環境や大地を再現してくれる。
元ちとせや中孝介の歌声に僕が感じるのは、奄美大島の大きな空、そして優しい潮風だ。これは琉球の島唄やハワイアンにも感じることだ。他にも、バグパイプの音色はスコットランドの一面に広がる草原と突き抜けるような空、ラップは爆発的なエネルギーを閉じ込める貧しい都市部の建物群、カントリーは南部の赤土を照らす悲しげな夕焼け…。

 僕が『花』を好きな理由は、その歌詞にもある。御徒町凧(おかちまちかいと)という詩人が書いた詞だが、随所に日本語の美しさと奥深さが表れている。と同時に、花の儚さとさりげない強さを愛する日本の心を歌っているようにも思う。

 このブログを読んでくれている人の中で、進むべき道に悩み、もがいている人もいると思う。そんな人にこそ、この歌を聴いて、体いっぱい奄美の潮風を浴びて欲しいと思う。

 こんな一節がある。

 
   「花のように ただそこに咲くだけで 美しくあれ」

 
 あまり難しく考えるな、裸の自分を見つめてみろ。そう歌っているように僕には感じる。


あとがき
 残念ながら僕が見たバージョンの動画は既に削除されてしまっていた。ここに掲載されているものは別バージョン。ピアノ伴奏だけで歌う彼の姿には何とも心打たれた。
歌詞リンク(goo)
http://music.goo.ne.jp/lyric/LYRUTND51864/index.html