Responsibility は単純に大きく分けると、response と ability に分解することが出来る。Response は 「応答」、「反応」 等の意味を持つ。いずれにせよ、漢字の 「応」 という字がその意味に最もふさわしいイメージを持つように思う。そして ability は 「能力」 という意味。
おや? Responsibility…応える、能力?それが 『責任』?予想外の発見に僕は驚くと同時に不思議な説得力を感じていた。その場は responsibility の持つ、『責任』 という意味、そしてそれを構成する要素を教え、それらの関連性については僕と生徒の次回までの宿題とした。
家に帰った僕は早速、自分の持つ一番大きな英英辞典を開いた。それによると、responsibility の元となる respond (応える) という単語はラテン語の respondere という単語に語源を持つ。
re は 「返す」
spondere は 「約束する」
つまり、respond は元々、"to promise in return" (約束をもってお返しをする) という意味なのだ。よって、responsible は 「約束をもってお返しをすることが出来る」 という意味を持ち、その能力を持つ者を描き出す。そして、論理的には responsibility の持つ 『責任』 とは、「約束をもってお返しをする、その能力」 ということになるのだが、これがそうではないのだ。
面白いことに、それは 「能力」 自体を指すのではなく、その能力を持つ者に 「課せられるもの」 を指すのである。僕の持つ辞典には responsibility の説明の一つとして次のようなものがある ――
“a particular burden of obligation upon one who is responsible”
(Random House Webster’s College Dictionary, 1997).
Responsibleの意味を踏まえて訳すと、このようになる。
「約束をもってお返しをする、
その能力を持つ者に課せられる義務という負担。」
その能力を持つ者に課せられる義務という負担。」
能力を持つからこそ義務を背負う。こうして語源を考えると、それは世間一般に考えられている、「責任がある」 という意味が持つ、外部から強制的に背負わされるイメージとはかなり異質なものであることが分かる。それは本質的に自発的であり、恩恵を受けた人やものに対する約束であると同時に、何よりも自分自身に対する約束、けじめであるように思う。
教育を受ける機会を得た者として、親や友人に恵まれた者として、人や大地の温もりに触れた者として、学生として、教育者として、大人として、母親として、父親として、女として、男として、人間として、そして一つの生命として、僕達が持つ 『責任』 とは何なのだろうか。僕達はどんな素晴らしいことを約束し、お返しすることが出来るのだろうか?
そこには、しばしば 『責任』 とは遠いところに位置付けられる
『自由』 が顔を覗かせているように思う。
『自由』 が顔を覗かせているように思う。
[1] KAPLANとは自分が教員になる前に努めていた留学予備校。留学を希望する社会人や学生に英語(TOEFLやTOEICなど)を教えていました。
英語と日本語
返信削除日本語と英語の語源って、その元をたどっていくと、2つの言葉のもつ歴史や文化、価値観が異なるんだな~と思い知らされることも。
例えば、”教育”と”education”。日本語の「教育」は、「教」=「右の部分は、棒でかるく叩いて注意する、上から施すという意味。左の部分は、大人が子どもに知識を授けるいう意味。」だから「教」は、大人が上から施すって感じを表してる。「育」=「上の部分は、「子」が逆さになってついている、子どもが生まれてくるときの形。下の月の部分は、肉(体)の意味。」だから頭を先にして生まれてくる赤ちゃんを肉付きよくする意味。
一方educaionは、これもラテン語にさかのぼり、動植物を育てるから転じて、「内に包まれているものを引き出す」というdevelopementに近い意味だったとか。
「education」を「教育」と訳しているけれど、「内に潜むものとを引き出す」と考える英語と、「上から施す」と考える日本語は、そもそもの教育に対しての考え方の違いがみてとれますよね。きっと多くの言葉が、翻訳として正しく使用されているものの、文化によって、意図している真意は違うのだろうね。これは日本語、英語だけでなく、独語、仏語…など全ての言葉をたぐると、教育に対しても、先人がどんな思いで使い始めたのか、ちょっと見えてきて、おもしろいよね。
きっと”責任”も、日本語のもともとの語源は、英語の発想とは違うのでしょうね。
AKI