“Economics for people, the planet, and the future”
「人々、地球、そして未来のための経済学」
というスローガンの下に集った経済学者達によるサイトで、世界中の300人以上の経済学者達の賛同を得ている。その中に、Hiroshi Onishi / Kyoto UniversityとTaro Abe / Nagoya Gakuin Universityという少なくとも二人の日本人学者の名前があったことが嬉しかった。どんどん日本の学者の間で広めて欲しいし、econ4.jp を立ち上げて欲しいと思う。誰か、経済学に通じていてリードを取ってくれる人はいないだろうか。
以下は、econ4が『ウォール街を占拠せよ』運動に呼応して作成したショートフィルムで、
“Occupy Economics”
「経済学を占拠せよ」
という力強いメッセージを打ち出している。
フィルムの中で、このプロジェクトのキーパーソンでもあるUniversity of Massachusetts-Amherstの経済学教授 James Boyce は次のように述べている。
「最も大事な問題の一つは、民衆ではなく自分達の特殊な利権に政府を仕えさせる、金持ちで権力のある利益団体らが、どれだけ政府を牛耳っているかということだ。」
“One of the key issues is the extent to which the government get captured by relatively wealthy and powerful interests who turn the government away from serving the public towards serving their particular set of interests.”
ここら辺は『Occupy Wall Street 百聞は一見にしかず』で述べた僕自身の問題意識と似ている。
以下はフィルムのスクリプト。
私達は、経済学の分野におけるイデオロギー的浄化に抗議する経済学者達です。同じように我々は、現在の経済危機の原因と結果に関するディベートにおける政治的浄化にも抗議します。
We are economists who oppose ideological cleansing in the economic profession. Equally we oppose political cleansing in the vital debate over the causes and consequences of our current economic crisis.
私達は、豊かで権力を誇る1%の人間達の短期的な強欲から経済を開放することを求める国中、そして世界中で行われているOWSの取り組みを支援します。
We support the efforts of the OWS movement across the country and across the globe to liberate the economy from the short-term greed of the rich and powerful 1 %.
私たちは、公共財の擁護者たちを公共の場所から追い出すために警察官や他の公務員を悪用する、冷ややかで歪んだ試みに抗議します。
We oppose cynical and perverse attempts to misuse our police officers and public servants to expel advocates of the public good from our public spaces.
私たちは、人々、地球、そして未来にとって優しい経済を造るビジョンに賛同の意を表明すると共に、経済的・社会的な正義のために私たちの民主的主義の権利を行使している占拠者の皆さんとの団結を宣言します。
We extend our support to the vision of building an economy that works for the people, for the planet, and for the future, and we declare our solidarity with the Occupiers who are exercising our democratic right to demand economic and social justice.
経済学者たちはOWSと共に。
Economists stand with OWS
この宣言の後に、「もしあなたが経済学者で、この宣言に名前を加えることを希望するのであれば、ここをクリックして私たちにメールを送って下さい」と書いてある。万が一これを読んで下さっている方で、この宣言に賛同する経済学者がいらっしゃったら、これを書いた甲斐があると言うものだ。
さて、前回の投稿はアメリカにいる読者宛てに書いたものなので、珍しく全て英語で書かせてもらった。もっと詳しく言えば、アメリカにいる教育学者(及び学生)達に呼びかけたものだ。
AERAというのはアメリカ教育学会というアメリカ最大の教育学会。それをOccupyしようという呼びかけだ。ここでは多くは語らないことにするが、特に2001年のNo Child Left Behind以降、米連邦政府の教育学に対する政治的侵害が甚だしい。僕が最も問題だと思うのは、研究費の配分を利用して、学術的アプローチそして分野に優劣をつけていることだ。政治が学問に口を出さないのは当たり前のことではないのか。そしてこれらの序列化が、公教育の民営化とそれに伴う公教育の解体に絶妙に結び付いている。そして、当然のことながら、公共事業最後のジャックポットとも呼ばれる公教育の民営化には、様々な利権が絡んでいて、1%の影は常につきまとっている。
それに対して、AERAはほぼ無言を貫いてきた。いつまでこの屈辱に耐えるのか…。僕は怒っている。
ただ、今日紹介したecon4との出会いは僕に希望をくれた。これを教育学でもできないか。AERAがあまりにも大きいため、コンセンサスは難しいだろう。でも、インターネットを使って、教育学における様々な分野の学者達の賛同を得ることは可能だろう。そして、AERA以外の教育学会ではコンセンサスは可能かもしれない。周りから固めていく手もありだろう。
そして、もっと言えば、これを経済学と教育学だけでなく、ありとあらゆる学術分野でcoalitionを組めたなら、大きな意味で、「学界」 vs. 1% という構図もできるのではないだろうか。
なんだか楽しくなってきた。
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OWSは大統領に対してどうなんでしょう。また、大統領はどう捉えているのでしょう。OWSに参加している人はかつて、現大統領を支持した人たちが多いのではないでしょうか。
返信削除矛先は富裕層。大統領を当然のように取り囲んでいる人たちで、大統領といえどもうかつに動けない状況なのかもしれません。日本の場合は政権交代が行われても、結局官僚と財界人の力が大きいみたいで迷走しています。
学会vs1%っていうのはいいですね。物語で言えば賢者が庶民と行動を共にして、悪徳商人を追い詰めるような筋になりますね。特に経済学者がこれまでのしがらみを絶ってでも集結したら力になりますね。次世代を担う子供達を育てる教育界も30年後を見据え頑張って欲しいです。
学会vs1%について。地球温暖化問題その他で、いくらデータを積み上げようが声を大にしようが、その姿勢に人として敬意を払うことなく「人(特に政治、金融、経済)は信じたい(自分に有利になる)ものを信じる」のだと暗澹たる気持ちになったことを思い出しました。
返信削除OWSのムーブメントとはかけ離れますが、わたしはやはり倫理の復活につきると思う。あと、ごくごく私見ですが、人口に一定の割合で存在する人格に病的な問題のある人(良心の欠如)が、集まりやすく、リーダーシップを取りやすいのが、政治、金融/経済ではないかと勝手に推測してます。すみません、短絡的&幼稚な意見は承知です。。差し支えあれば、削除してくださいね。
あと、もしかして誤解されてるかも、と思ったので、マサチューセッツ在住のママですよ、とだけ。
Musapooさん、
返信削除> OWSは大統領に対してどうなんでしょう。また、大統領はどう捉えているのでしょう。OWSに参加している人はかつて、現大統領を支持した人たちが多いのではないでしょうか。
その通りです。OWSとオバマ大統領に関してはいつか書かなくてはと思っていたことです。だからこそ、この運動にとって、大統領選のある来年が大きな試練となることでしょう。今のところ、OWS支持者にとって、支持できる大統領候補者はいないのが実情です。OWSの問題意識は、ウォール街の権力者達で周りを固めてきたオバマとぶつかり合う所が実に多いのです。かといって共和党候補者の顔ぶれはもっと酷いし。僕は、この運動がアメリカの2党政治そのものに疑問を投げかける所まで行ってほしいなと思っています。
> 次世代を担う子供達を育てる教育界も30年後を見据え頑張って欲しいです。
何か動きだしそうな予感がしています。また忙しくなりそうです!
大裕
mmさん、
返信削除大丈夫。誤解してませんよ。先週末参加との噂をきいてたので…。ともあれ、コメントを通してmmさんと対話できて嬉しく思っています。段々素が出てきていて面白いです。-^o^-
確かに。学界だけが頑張ってもダメでしょうね。でもこれだけの民衆が立ち上がっている中での学界の行動には、今までなかったインパクトがあるのでは、と期待しています。最終的には、我々一人ひとりが、自分のprofessional/personalのキャパの中で、自分にできることをやるしかないのでしょうね。でも、それをみんなが実行した時、今まで成し得なかった変化が生まれるのだと信じています。
大裕