ウルムでは、ドイツ人研究者と結婚した妻の姉の家でお世話になっている。
昨日の朝、どこに行く当てもなく、一人で走りに行った。
家を出て、しばらく坂を下るとドナウ川に出る。
ドナウを上り、ウルムの町まで走るか、反対にドナウを下るか。
僕はまだ行ったことのない道を走るのが好きだ。ドナウが次にどんな景色を見せてくれるのか知りたくて、下ってみることにした。
しばらく走ると、道はドナウを逸れ、目の前に広大な農地が現れた。
トウモロコシと小麦畑が広がる、ドイツらしい景色だ。
どこへ向かうのかさっぱりわからないまま、ほとんど車も通らない田舎道を走る。
遠くに教会らしいものが見えてきたので、僕はその方角に走った。
写真中央より少し左側に、教会と思われる建築物のてっぺんが見えるのがわかるだろうか。
教会は町で最も高い建築物であることが多い。人々がお金を出し合い、町の威厳をかけて、立派なものを作ろうとするからだろう。
そしてきっと、ヨーロッパでは、何百年にも渡り、教会は旅人を町へと誘導する役割を果たしてきたのだろう。岬にある灯台が方角を知らせ、船を安全に誘導するように。
そんなことを考えるうちに、僕は自分が中世の旅人であるような錯覚におそわれた。
教会のふもとにある町は、どんな所なのだろう。
人々はどんな暮らしをしているのだろう。
日本人はいるのだろうか。
僕は受け入れてもらえるのだろうか。
辿り着いたのは、Neu Ulmという都市の離れ町だった。
こぢんまりとした、かわいい町だった。
アジア人どころか、黒人も一人もいない。
それでも、通りすがった人たちは僕に挨拶を返してくれた。
商店街と思われる所に、一軒の可愛らしいパン屋さんを見つけた。
おいしそうなパンばかりだ。
その中から、焼き立てと思われる小さな丸いパンを選んで買った。
プレッツェルのような、シンプルでも味わい深いパンだった。
その町に暮らす人々のことを、ほんのちょっとだけ、知ることができた気がした。
0 件のコメント:
コメントを投稿