2012年8月5日日曜日

旅人と教会

今、ドイツのウルム(Ulm)という所に来ている。高さ世界一を誇るウルム大聖堂で知られる都市だ。




ウルムでは、ドイツ人研究者と結婚した妻の姉の家でお世話になっている。




昨日の朝、どこに行く当てもなく、一人で走りに行った。




家を出て、しばらく坂を下るとドナウ川に出る。




ドナウを上り、ウルムの町まで走るか、反対にドナウを下るか。




僕はまだ行ったことのない道を走るのが好きだ。ドナウが次にどんな景色を見せてくれるのか知りたくて、下ってみることにした。




しばらく走ると、道はドナウを逸れ、目の前に広大な農地が現れた。





トウモロコシと小麦畑が広がる、ドイツらしい景色だ。




どこへ向かうのかさっぱりわからないまま、ほとんど車も通らない田舎道を走る。




遠くに教会らしいものが見えてきたので、僕はその方角に走った。



写真中央より少し左側に、教会と思われる建築物のてっぺんが見えるのがわかるだろうか。

教会は町で最も高い建築物であることが多い。人々がお金を出し合い、町の威厳をかけて、立派なものを作ろうとするからだろう。




そしてきっと、ヨーロッパでは、何百年にも渡り、教会は旅人を町へと誘導する役割を果たしてきたのだろう。岬にある灯台が方角を知らせ、船を安全に誘導するように。




そんなことを考えるうちに、僕は自分が中世の旅人であるような錯覚におそわれた。




教会のふもとにある町は、どんな所なのだろう。




人々はどんな暮らしをしているのだろう。




日本人はいるのだろうか。




僕は受け入れてもらえるのだろうか。










辿り着いたのは、Neu Ulmという都市の離れ町だった。




こぢんまりとした、かわいい町だった。




アジア人どころか、黒人も一人もいない。




それでも、通りすがった人たちは僕に挨拶を返してくれた。




商店街と思われる所に、一軒の可愛らしいパン屋さんを見つけた。







おいしそうなパンばかりだ。




その中から、焼き立てと思われる小さな丸いパンを選んで買った。




プレッツェルのような、シンプルでも味わい深いパンだった。




その町に暮らす人々のことを、ほんのちょっとだけ、知ることができた気がした。

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