3年前からアメリカ東部の大学で教育学のコースを教えはじめ、クラスでもNCLBのことを話している。そしてどのクラスでもまだ高校を卒業したばかりの若い生徒たちに同じ質問をされる。
「NCLBの意図は理解できません。どうして既に経済格差、社会的な差別に苦しんでいる人たちに更に制裁を加えるようなことをするんですか?どうして苦しんでいる人たちを助けないんですか。」
かなり的を得ている問いだ。同時に彼らの純粋な熱い思いが伝わってくる。
今学期はこのブログの影響もあっって生徒たちにヒントを与えながらNCLBを読み直したり、今の公教育の現状を批判的に見つめる参加型の授業を進めてみた。すると学期末のリサーチペーパーにはこのブログで大裕君が書いていた引用と同じ、 「NCLBは教育の民営化を正当化するためにデザインされたシステムのようだ」 という結論がぼちぼち表れた。そんな結論を見て私自身が驚いていたところだ。私が教えているのは保守的な大学なので発言や内容やトピックの提示の仕方にはかなり気を使ってきたからだ。 「言ってないことまでわかってもらってうれしい」 、 「10代にしてなんてすばらしい批判的思考力を持っているんだろう」 と感動に浸ると同時に既に同僚やアドミニストレーションの目が気になる。
来学期から教育実習にいく生徒からは、「こういう現実がわかったのはいいけれど、実際に教員として生きていくためにはシステムに従うしかない。教育実習先に挨拶に言った後どうしていいかわからなくて涙がとまらなくなりました」 と言われた。
本当のことを知ることはつらくて孤独な体験だ。そして本当のことを伝えるにはリスクが伴う。そう思うと決して生徒を煽動するようなことをしてはいけないと思う。と同時に 「どうして苦しんでいる人たちを助けないんですか」 という若い生徒たちの純粋な問いに彼ら自身が答えられるよう導かなければならないと思う。このブログが提示してくれた数々の情報と洗練された解釈は、今学期そのような試みを続ける私にとって大きな支えとなった。今後とも最前線の情報そして数々の情報が示す社会的教育的現象を批判的に読み解くcutting edgeなヒントをこのブログが与えてくれることを期待したい。
宮澤 かおる
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