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2016年9月27日火曜日

【シカゴで再び教員組合ストライキの可能性】

96 Percent of Chicago Teachers Vote to Strike, Union Says

2012年、教員一斉ストで全米を驚かしたシカゴ教組。
志高い教師らによる組合改革で「互助会型」から「社会運動型」組合へと生まれ変わったシカゴ教組が、再びストに踏み切る可能性が高まった。

先日の集会には全組合員の90.6%が参加、そのうちの95.6%がストを承認した。今後の団体交渉の行方次第では、早ければ10月11日にもストが決行。そうなれば2012年以来初のストとなる。


シカゴ教組は、教員の解雇等による緊縮政策で新たな予算を確保するのではなく、新たな財源を求めることを市に求めてきた。また、80年代からシカゴ学校区が負担してきた教員の年金の7%を自己負担にするという市の方針に反対してきた。


組合がうまく機能すると、こうやって行政の横暴に対して民主的チェックを入れることができるんだよな。富裕層からしっかりと税金を取って、大企業への寛大すぎる税控除を廃止すれば、教育のための予算なんていくらでも確保できるんだから。経済格差がどんどん広がるのは、民主主義が機能していない証拠。


行政が市民の「自己責任」を徹底追及するのはよくわかる。だってそうすればするほど、行政の責任が覆い隠されるのだから。


(シカゴ教員組合ストライキについて詳しく知りたい方は、『崩壊するアメリカの公教育 〜日本への警告〜』第8章をご参照のこと。)

2013年12月5日木曜日

公教育の末期的症状 〜アメリカからの警告〜


昨日、ペンシルバニア州フィラデルフィア市で、大模な教育予算削の穴埋めに市内の公立学校の壁面を民間広告に使うという信じられないニュが流れた。(ちなみに、実現さえしなかったものの、2004年には、市内の高校の命名権を売りに出すという法案までもが検討されたというから笑ってしまう。)

フィラデルフィア市は、今、おそらく全米で最も公教育の存続が危ぶまれている所であり、ある新聞紙は、「末期的症状にある教育システム」と呼ぶほどだ。

オバマ政権に対する反動で共和党が全米各地で支持を伸ばした2010年の中間選挙。ペンシルバニア州では右翼のTom Corbett(トム・コルベット)新知事が誕生した。

2011年、コルベット知事が教育で最初に手がけたのは、約1000億円という前代未聞の規模の教育予算削減だった。

それによりフィラデルフィア市は約629億円の予算不足。借金により何とかしのいだが、市の財政は火の車となった。

ただ、大事なのは、この「財政危機」が作り上げられたものだという点だ。証拠に、限られた公教育予算から実に約675億円もが、民間経営のチャータースクールにあてがわれ、新たな刑務所を作るために約700億円もの税金が注がれている。Al Sharpton牧師はこのように言っている。

「聖書には、種をまいたものを刈り取るのだと書いてある。もし刑務所に投資をして学校の予算を削減するのなら、それは人間の教育ではなく監禁に投資していることになる。」

今年、新年度を前に市の教育長は約304億円の予算不足を報告。予定通り9月に新学期を始めるために、市は4000人近くの教員や職員を解雇、24校もの市内の公立学校を閉鎖した。

9月には12歳の女の子が学校で喘息の発作を起こし、帰宅後に搬送された救急病院で息を引き取ったことがニュースとなった。財政削減のため、その学校には看護婦(日本における養護教諭)が木曜日と金曜日にしか来校せず、その女の子が亡くなったのは水曜日だった。

これを機に、今度は養護教諭の仕事を民間にアウトソーシングでもするのだろうか。

架空の政危機をショックドクトリンの絶好の機会とし、公共予算を削減し、更なる公共事業の民化を促すという悪しき流れが、フィラデルフィアだけでなく、全米各地で起こっている。(ちなみに、オバマ政権の教育政策最大の目玉であったRace to the Topも、2008年のリーマンショックによる財政危機を見事に悪用し、結果的に公教育の民営化と組合潰しを全米規模で促進した、ショックドクトリンのお手本とも言える国家教育政策だったように思う。これについてはまた別の機会に書きたいと思う。)


来年、奇しくも、全米最大の教育学界であるアメリカ教育学界がフィラデルフィアで行われる。前回のサンフランシスコに続き、今回も自分が主催するEdu4で、学界従来の発表形式であるプレゼンではなく、学者が教員や親、その他地元のアクティビスト達と一緒になって教育運動を起こすためのシンポジウムを行うことになっている。どんなアクションが生まれるか、今から楽しみだ。

2013年12月1日日曜日

企業の企業による企業のためのアメリカ教育「改革」 〜アメリカからの警告〜



2013年4月19日、ニューヨーク州アルバニー。
「ニューヨーク州教育庁は、大幅な教育予算削減への対応策として、何億もの資金を生み出す可能性を持った公立学校の新たなプログラムを発表した。(中略)ニューヨーク州教育庁舎で金曜日に行われた記者会見で、教育長官のジョン・キング博士は満面の笑みで説明した。「多くの学区が貧窮する中、ニューヨーク州では映画業界にならい、州や地区の学力テストを用いて企業が年間を通して宣伝活動を行えるよう許可することにしました。」キング教育長官の説明によれば、ハリウッド映画の仕組みと同じように、企業は会社名及び商品名をテストの中にて演出する権利を買えるようになるという。」[i]

今年の4月、こんな記事がネット上を駆け巡った。「アメリカの公教育の民営化はここまで進んでいるのか」とあなたは驚いただろうか。それとも、「どうせデマだろ」と見事に見抜いただろうか。だが、実はこれ、単なるデマではない。脚色してあるものの、ある事実に基づいた巧妙なデマだからだ。その前日、ワシントンポスト[ii]、ニューヨーク(以下NY と省略)ポスト[iii]等の新聞社が、NY 州統一学力テストの8年生の英語の試験で、IBM、レゴ(LEGO)、MUG ルートビア、など、少なくとも6社程の会社名またはブランド名が不必要に問題に盛り込まれていたというニュースを報じた。州教育庁は、テストの傾向対策を防ぐという理由で、これらの学力テストの公表を拒否しているが、取材を受けた生徒たちによると、問題とは全く関係のない特定の商品や企業名がトレードマーク付きで載っており、欄外には、「○○はルートビアの大手ブランドです」など、商品の説明文まで添えられていたという。テストを作成したピアソン・エデュケーション(Pearson Education)は、これは州が新たに取り入れた全米共通学力基準4に対応した初めてのテストで、日常的に使われる文章を分析する能力をテストするため、ブランド名などが出てくることは避けられないと釈明した

この12月から4回に渡ってアメリカ公教育の崩について、季刊誌と教育民主教育研究所にて連載させて頂くことになった上記の文は、その第1回人間と教育80号の企による企のためのアメリカ教育改革」 〜アメリカからの警告12月10日発売予定)からの抜粋で、元はといえば今年の夏、『2030 ビジョン 教育フォーラム』に呼んで頂いた際に行った講演の一部を掘り下げたもの。世界最大のテスト会社ピアソンによる子どものテストを使った営業活動や政治との癒着からえてくる、企業の営利目的に動かされるアメリカの公教育政策を描いた。

実は、そのピアソンが、2015年から経済協力開発機構(OECD)の国際学習到達度調査(PISA—ピサ)のテスト作成を担当する。もはやピアソン帝国はアメリカだけでなく、世界をも飲み込もうとしている。近年、ピサの日本における影響力が強まってきていると感じている人も少なくはないと思うが、ピアソン参入後の影響力の拡大は、きっと桁違いになるだろう。

幾つかのことが予測できる。一つは、ピアソンが様々な手で国際的な競争を煽ること。政治との癒着を通し、参加国も確実に増やしてくるだろう。また、「ピサ型学力」に合わせた教材、模擬試験、カリキュラム、データシステム等の開発を徹底的に行い、国レベルでの販売攻勢をしかけるだろう。そして、各国の教育省や経団連のような団体とタイアップして、各国の教育政策のコンサルティングや、全国学力テストや国の指導要領さえもピサ 型学力に準ずるよう圧力をかけてくるかもしれない。

この悪しき流れが日本に来るかどうかは、日本がいかに腰を据えてPISA に対応できるかにかかっている。ちょうど今日から2日後の12月3日、OECDPISA2012 の結果を発表する予定になっている。結果が悪かった場合、一番危ないのは、一部の政治家がメディアを煽って、ショックドクトリン(クライン, 2007)の絶好の機会とし、その結果を「PISA ショック」に作り上げ、社会的麻痺を機に理不尽な教育「改革」を実行することだろう。日本では、日経新聞がピアソンと提携している。数日後に発表されるピサの結果を日経新聞がどのように報道するかも、注意して見ておく必要がある。また、日本の結果が良いにせよ悪いにせよ、様々なアジェンダをもつ団体が、自分たちに都合の良いように解釈するであろうことも、念頭に置いておく必要があるだろう。

今、我々に求められているのは、より根源的な問いと向き合うことであるように思う。どんな力が教育を動かしているのか。誰のための、何のための教育なのか。




[i] Students Last, 2013. http://studentslast.blogspot.com/2013/04/this-test-brought-to-you-by.html

[ii] http://www.washingtonpost.com/blogs/answer-sheet/wp/2013/04/20/new-standardized-tests-feature-plugs-for-commercial-products/
[iii] http://nypost.com/2013/04/18/learn-abcs-ibms/
[iiii] ナオミ・クライン、2007、『ショックドクトリン』

2012年6月22日金曜日

More Than a Number

バンクーバーで出会い、良き同志となったLong Island University-PostArnold (Arnie) Dodge教授。その彼が、8月後半にコロンビア大学にて計画されているEdu4の学会に、現在の「教育改革」を我々と同じように危惧するアーティスト達を招かないかと提案してきた。彼が紹介してくれた一つの曲をここで分かち合いたいと思う。


米教育界の過剰なテスト教育を、「僕は数字なんかじゃない」と子どもの視点から歌うプロテストソングだ。詩が美しい


冒頭にこんな説明が書かれている。

The minds and spirits of children will always rise above numbers. Let us hold this truth and use it to guide our policy and our decisions.

「子どもたちの考えと精神はいつの時も数字をしのぐ。この事実を抱きしめ、私たちの政策と決断を導かせよう。」



More Than a Number



Music by Barry Lane & Lyrics by Amy Ludwig VanDerwater (2012)
Cover art by Georgia VanDerwater (2005)

More Than a Number

I am quiet in the classroom.
I don’t always raise my hand.
I don’t always answer questions.
I don’t always understand.
But I always have ideas
when I stare up at the sky.
My sister likes to tease me
for always asking, “Why?”

I am more than a number.
I am more than a grade.
I know the constellations.
Here’s a painting that I made.
I read books in my closet.
I will not be a ‘2’.
I am more than a number.
I’m a person just like you.

I speak one language here
and another in my home.
I daydream in both languages
whenever I’m alone.
I’m good at climbing trees.
Mom’s teaching me to sew.
I am full of secrets
a test can never know.

I am more than a number.
Watch me fold this plane.
I snuggle with my beagle.
There’s music in my brain.
Someday I’ll go to Egypt.
I will never be a ‘2’.
I am more than a number.
I’m a person just like you.

If you think I can be measured
by numbers on a screen…
...if my whole school becomes a test
where will I learn to dream?
I love to do hard problems.
I write stories, and I laugh.
My gifts are so much greater
than the data on your graph.

I’m more than a number.
I invent things when I play.
I collect shells and fossils.
Please hear me when I say
I will not be a ‘1’--
a ‘2’, a ‘3’, or a ‘4’.
I am me. I’m a mystery.
I’m a child – not a score.

2012年6月18日月曜日

教員と親が団結する時


アメリカで3番目に大きい学区であるシカゴで、公立学校教員一斉ストライキの可能性が浮上した。実施されれば25年ぶりとなる。州法で求められる全教員の75%を遥かに上回る、90%近い割合でストが支持された。ビジネスマインドで教育を行う運営陣に対して教員の怒りが爆発したのだ。



面白いことに、教員達のこの決断を支持する署名が保護者の間で回っている(以下参照)。僕のところにも回ってきた。教員と保護者を繋ぐこのような動きは非常に面白い。



前にも書いたと思うが、教員組合の働きには実は重要なものが多い。教室における教師と生徒の割合の拡大防止や教育設備の向上などはわかり易い例だが、基本的に、教員にとっての労働環境の向上とは、子どもの学習環境の向上と比例するものが多い。



だから、アメリカも日本も教員組合はイメージがあまりにも悪く、やり方が下手だと思うが、個人的には教員組合というのは教育改善には欠かすことのできないピースだと思っている。



だから、「教育市場」にて大きな力を持つ保護者が団結して教員達と教育改善に取り組むことは、非常に有効な手段だと思う。



民主主義に参加できる、教養のある親の育成が求められている。





June, 2012
Chicago, IL

Dear Teachers,

As CPS parents, we are writing to recognize you for your work on behalf of Chicago’s children, and to offer you our support in the coming months and years. We share your sense of urgency and your aspirations, and we recognize the brilliant, difficult work you do every day, in the biggest and smallest moments of our kids’ lives. Parents and teachers are on the same side because we want the same things—better schools for all children, and a better system to support those schools. You see our children in all their complexity and curiosity, in their desire to learn, to be challenged, to be respected, understood, and seen. And we see you.

We know that the recent strike authorization vote received the support of 89% of CPS teachers. In our school, the rate was over 98%. We know that you are voting not for yourselves, but for all teachers, particularly those in schools with the least resources. We take that vote and level of consensus seriously; your independent, collective voice is indispensable to any sensible conversation about education. We want to say - to you and to everyone - that the recent steady drum-beat of contempt from politicians and pundits is unacceptable, and that we, as parents, do not and will not accept a narrative that vilifies or blames you. This is not simply a conversation about wages and benefits, but one about our shared goal of building a just and decent school system for both teachers and kids. 

The Chicago Teachers Union’s proposals represent a fair set of standards for everyone: smaller class sizes; more student access to music, art, gym, and libraries; more counseling time; and yes, adequate compensation and benefits for teachers, who are being asked to work longer hours next year. All of these are clearly essential to both good teaching and good learning. In our school, in all CPS schools, and in every school everywhere, good working conditions are good teaching conditions. And good teaching conditions are good learning conditions.

Yesterday, the last day of the school year, we watched you re-organize hundreds of books you donated personally to our school, all of them labeled by hand, by you. One was the first book a small student, in the room helping, had ever read “all by self,” with you cheering. She remembered; you remembered. We have watched you think through everything from questions about math, music, and literature – to the daily social and developmental challenges of childhood. We have heard you sing songs from your own childhoods, and seen you engage our kids with each other and the world, studying everything from bugs to berimbaus. With you, they wrote and signed their own books, traveled to D.C., choreographed and performed dances, solved fractions, slept at the nature museum, read life-changing books, cooked Brazilian cheese puffs, made documentaries, learned English, and sang with seniors at our neighborhood retirement community. You are teaching them to be engaged citizens, like you, people who care about others. That is the lesson we take from your work and your vote.

Seen up-close, the complexity of teaching is breathtaking and often unheralded; you guide our children through their days in more ways than it’s possible to quantify. So we are writing to say that we understand that teaching is deeply intellectual and ethical work. And that we see you doing it beautifully. We see you, and we stand by you.

Your Fans,

Rachel DeWoskin, Zayd Dohrn, Elizabeth Caya, Rob Caya, Dan Cohen, Beth Hobson, Scott Hobson, Julie Kosowski, Seth MacLowry, Stacy Markham (parents, please let us know if you'd like us to add your names!)


2012年6月9日土曜日

テスト中心教育にNO!! NYで親と子どもらによる反対運動






木曜日、4歳の長女を連れて、あるデモに参加した。



集まったのは親、子ども、教育学者などおよそ300人。



場所は、教育系の会社では世界最大を誇るピアソンのマンハッタン本部だ。



No Child Left Behind (NCLB: 「落ちこぼれ防止法」)施行(2002年)以来、アメリカでは過剰なほどに試験が行われるようになった。今回のデモの内容は、大まかに言えばアメリカにはびこるテスト至上主義に反対するという趣旨のものだった。







『ウォール街を占拠せよ』が政治の中枢であるワシントンDCではなくウォール街を選んだように、今回のデモも、政治を金で動かすコーポレートパワーの象徴としてピアソンを選んだ。



小規模だったが、マーチングバンドまで登場して、多くの大人と子どもがお祭り騒ぎでピアソンの周りをグルグル回る姿は、多くの人々の注目を集めた。







また、メディアもたくさん来ていて、デモの様子はすぐに報道された。



(その他の報道は全てここにまとまっている)





このデモと同時進行で行われている一つのプロテストがある。ピアソンによる調査試験の一斉ボイコットだ。



今月、ピアソンは来年使うテストのための調査を、NY市中の小学校で行う。実に一週間まるまる授業の時間を使い、子どもたちに調査テストを受けさせるのだ。



しかし、3年生から8年生(日本での中学2年生)の子どもたちは4月に2週間も続いたテストを終えたばかり。しかもそれだけ時間がかかったのは、問題の中に既に来年の調査問題が含まれていたからだ。



テストにそれだけの時間をかけるぐらいだったら、もっと意味のある教育を子ども達に!というのが多くの親たちの願いだ。





しかも、この問題には莫大な利権が絡んでいるわけで、そのために子どもたちを実験用モルモットにするのかと親たちは怒っている。どのくらいの規模の利権かといえば、ピアソンがニューヨーク市のDepartment of Educationと結んだ契約は、実に5年間で32百万ドル(約255千万円)だ(Huffington post)。



そして今回、このデモを企画したNY3団体(Change the Stakes, Parent Voices New York and Time Out From Testing)が協力して運動を推進した結果、61校の親と子どもたちがピアソンによる調査テストをボイコットすることになった。



ガンジーの非協力の理念を思い出させるこの運動、教育における真のパワーは、実は親と子どもにあることを教えてくれる。



2014年には、ピアソンによる幼稚園児対象のテストが始まるそうだ(NY Times)。