2012年4月29日日曜日

Edu4 ~ Petition ~



Dear friends around the world,


Here is a call for action!! How many people in the US and around the world do you think share the concerns for the current state of education (e.g., millions of low income and minority students being denied access to decent education, “educational reforms” that embrace corporate ideologies and advance privatization while undermining public education, test-driven education that truncates the possibilities of teaching and learning)?  300,  1,000,  10,000?  That’s exactly what we will find out by launching the Edu4 petition site. You will be able to sign it later today. Join us!!  Daiyu


2012年4月28日土曜日

Edu4 ~いざ、バンクーバーへ~


410日(火)、普通に家族と夕食をした後、22:40発のCathay Pacific航空の便でニューヨークのJohn F. Kennedy空港を出発。夜遅い便にもかかわらず、離陸直後に食事が出てきたのには驚いた。香港に拠点があるというCathay Pacific。値段も一番安かったし、食事もサービスもなかなかで、良い意味で期待を裏切られた。

夜中の1:40、バンクーバー着。すぐにタクシーでUniversity of British Columbiaに向かった。30分ほどでキャンパス内にある宿舎に着いた。米ドル安でカナダドルとほぼ変わらないため、米ドルをそのまま使えるのは便利だった。

部屋に着くと、Andrewは既に横になっていた。先に着いていたにもかかわらず、部屋に一つしかないベッドではなく、床に敷かれたマットレスに寝ているところがアメリカ人らしくない。

Andrewは僕がアシスタントを務めるクラスの生徒だった。最初から反応が良く、教育に対しても僕と似た問題意識を持っていた。Edu4の話をしたら喰らい付いてきて、いつしかこの取り組みにおける僕の最大のパートナーとなった。

その夜は数時間寝て、早めに始動することにした。二人で朝食をとり、その日の午後3時半に予定されているシンポジウムの準備をし、配布資料を印刷した。

会場に入ると、客は予想よりもずっと少なかった。今回の学会、American Association for the Advancement of Curriculum Studies (AAACS) の一つの目玉であるBill Pinarのシンポジウムと時間が重なっていたのだ。ハプニングもあった。僕らのシンポジウムのdiscussant役を買って出てくれたJanet Miller教授の飛行機が遅れ、開始時刻に間に合わなかったのだ。

僕らは彼女なしに始めることにした。

自分で言うのも何だが、僕は本番に強い。発表前は緊張するが、いざ自分が話し始めると、いつも不思議と心が落ち着く。今回もそうだった。

僕らは今回のシンポジウムを Occupy Movements and ‘Social Imagination’ と名付けた。最初はその名前の由来から始めた。

Edu4がいかにOccupy Wall Street (OWS) の延長線上にあるものか、Maxineの影響を受けた我々が、彼女の ‘social imagination’ というコンセプトを軸に、いかにOWSが始めた会話を繋ごうとしているか。

In what ways does Maxine Greene’s philosophy help us understand, trouble, live, and re/imagine the Occupy movements from our differing educational perspectives? How can we embody her philosophy in ways she would never imagine?

Maxineの哲学を、彼女自身が想像もしないような方法で具現化できるか…。それが自分たちに課した挑戦だ。

次に、予め用意していたMaxine Greeneのビデオを放映した。Maxineの声を聴くと、自分の表情が和らいでいくのを感じ、更なる情熱と使命感が湧き出てきた。

(続く…)



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2012年4月17日火曜日

Edu4 ~団結宣言~

最初のメッセージに添えられ、一週間で8カ国、160人以上の教育学者達を繋いだ団結宣言。実際の署名はここ。教育界のスーパースターたちが名を連ねている。


 

Edu4

4 children, 4 the public, 4 social justice, 4 the future


Mission:

Edu4 is a public space that seeks to engage diverse individuals in collaboration and dialogue, across boundaries and disciplines, with the aim of initiating concrete actions toward social justice in education.

Solidarity Statement:

We are education scholars, students, teachers, and citizens who support worldwide democratic efforts that demand economic and social justice.

Access to decent education depends upon economic and social justice, and is a fundamental human right that the federal and state courts have recognized as essential to the maintenance and flourishing of a democratic society. Therefore, we oppose the current institutional structure which, instead of taxing the wealthy, diverts millions of dollars from education and denies meaningful educational opportunities, especially, to millions of low income and minority students.

Equally, we oppose today’s “educational reforms” that embrace corporate ideologies and advance privatization while undermining public education. Especially, we oppose NCLB’s test-driven education that truncates, rather than expands, the possibilities of teaching and learning.

We extend our support to a vision of building an education system that works for children, for the public, for social justice, and for the future. We thus declare our solidarity with any movement that exercises the right of all citizens of a democratic society to demand economic and social justice.

If you’re an educator and would like to add your name to this statement, please send us an email at: edu4team[at]gmail.com


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Edu4 ~最初の手紙~

Edu4は一通の手紙から始まった。
"Creating a united front of education scholars"というタイトルで、何人かの教育学者達に送られたその呼びかけのメッセージを、ここで紹介しておきたい。



Dear friends and colleagues,

We hope this message finds you well. Today, we want to extend to you all an invitation to support a new project that aims to unite education scholars against injustices in the field of education. This project is greatly inspired by Econ4, which advocates “Economists 4 people, 4 the planet, 4 the future.” Econ4 is run and supported by economists all over the world united against market fundamentalism’s ideological and political cleansing that is happening in the field of economics and policymaking.

Similarly, under the banner of “Educators 4 children, 4 society, 4 the future,” we want to bring together education scholars who oppose today’s “education reforms” that embrace corporate ideologies and advance privatization while undermining public education. We believe it is important to let the public know that many current education policies, both federal and local, largely discount educational research, for example. At the same time, we believe it is necessary to put pressures on our political leaders by showing that education scholars are now united against corporate education policies.

This project was first conceived as a part of Social Imagination Projects that were initiated by
individuals who have been inspired by Maxine Greene and her visionary educational philosophy. In her Teacher as Stranger (1973), Maxine emphasizes the importance of teaching, learning and questioning with wide-awakeness, and she urges us “to develop a fundamental project, to go beyond the situations one confronts and refuse reality as given in the name of a reality to be produced” (p. 7). Hardly an illusion or an escape from “reality” into fantasy, Maxine teaches us that social imagination begins with identifying troubles and suffering in our deficient society. She argues that it is urgent to create a public space where educators, who are discontented and even outraged with our current education systems, can find each other to embark on imaginative initiatives for educational change. “I don’t want to save the world,” says Maxine, “I want to start a conversation.” In a large sense, this initiative is an invitation to a conversation she has begun.

There is so much to discuss, and so much to do. Finally, if you’re an educator and would like to add your name to the attached statement, please send us an email by clicking here. Also, we would appreciate it if you could circulate this among other educators who might be interested in joining this initiative.

Sincerely,


Edu4 Project Team


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Edu4 ~想像を行動で綴る~

昨日、バンクーバーから帰って来た。先週火曜日からの6日間、前回 紹介したプロジェクト、Edu4における良きパートナーであるAndrewと、何百人の学者たちの前でプレゼンをしたことだろう。

出発前、僕らの中にあったのは綿密なプランではなく、「二つの学会に行って、できるだけ多くの学者達にEdu4を広めたい」 という情熱と想像に過ぎなかった。最初に訪れたAAACSという教育学会でのプレゼンは決まっていたが、それ以外はほぼノープランで、Edu4に既にサインしてくれている学者達と連絡を取り、会える人に会おうというだけだった。先々週にもう一つのシンポジウムを、その取りまとめ役として終えたばかりの自分にとっては、仕方のないことだった。

帰って来た今、言葉にし難い、不思議な感覚が自分の中にある。それに向けて一生懸命練習してきた大会で優勝したような感覚だ。想い描いていた未来が現実となった、ふわふわとした感覚だ。

でも、それは、情熱を頼りに想像を行動に移した結果に過ぎず、この現実が信じられないということとは違う。これは、既に頭の中にあった未来という時の筋道を一つ一つの行動で 「今」 として綴っていった結果であり、デジャブーといった方が近い。

「ここに来たことがある…。」 そんな感覚だ。


既に次の勝負は始まっている。何回かに分けて、少しずつ綴っていきたいと思う。

(続く…)



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2012年4月11日水曜日

Edu4 ~勝負の時~

『再開の時』で激動の2011年を僕なりに振り返ったが、一つ重要なニュースが抜け落ちていたことにあなたは気付いただろうか?



Occupy Wall StreetOWS: ウォール街占拠運動)だ。



これなしに2011年を語ることはできないと僕は思う。チュニジアに始まった革命の機運は、アラブ諸国に飛び火し、アメリカのウィスコンシン州の人々を勇気づけ、海を渡ってスペイン、ギリシャなどを巡り、9月にはまたアメリカに戻ってきた。Occupy Wall Street(ウォール街占拠運動)として展開されたこの運動は、アメリカ全土、果ては世界中の大都市にまで飛び火した。



2011年の終盤、僕はブログを通してOWSのことを日本に向けて発信することに自らの使命を見出していた。日本におけるOWSの報道があまりにもこちらの現状と異なっていると感じたからだった。どれだけの盛り上がりを見せ、どれだけ優秀な人たちが運動に参加し、どれだけの可能性があるか、一生懸命伝えようとした。



僕がOWSに興味を持ったのは、昨秋から僕がアシスタントを勤めるMaxine Greeneのおかげだった。以前にも紹介したが、今年94歳になった彼女は、根っからのファイターだ。自分の現状はもちろん、社会の現状に決して満足することのないMaxineは、女性、学者、そして一人の教育者として、常に問題を見極め、怒り、闘い続けてきた。



そんなMaxineのアシスタントとして恥ずかしくないよう、僕は彼女の目で世界を見ることから始めた。今では車椅子と付き添い人なしではどこにもいけず、酸素さえも常に鼻のチューブから取り入れているMaxine。でも、彼女がOWSに刺激を受け、うずうずしているのは一目瞭然。僕はZuccotti Park (別名「リバティープラザ」) に行くことにした。



僕自身がOWSにはまっていったのはのはそれからだ。一週間に2度ほど、Maxineに会いに行く度に、僕が実際に見たり聞いたりしたことを彼女に伝えるようになった。二人で新しい展開に心躍らせ、様々なことを議論した。



OWSについて調べる流れの中で、あるサイトに出会った。Econ4.orgというサイトで、そこでは市場原理主義のイデオロギー的、政治的支配に反対する世界中、300人以上の経済学者達がOWSの理念に賛同するという声明文に署名していた。



自分の「経済学者」のイメージを根本から覆された気がした。衝撃を受けると共に、僕は考えた。経済学者ができるのに、教育学者にできないわけがない。市場原理の導入をベースとしたここ数十年のアメリカにおける 「教育改革」 に対抗して、教育学者達をまとめよう。Maxineにそう話したのが、Edu4の始まりだった。 (全て英語で書いたので、見落とした人も多いかもしれないが、実はこのビジョンについては125日の “Un/Occupy AERA Part 2” という投稿で既に書いている。そうそう、言うまでもないかもしれないが、Edu4というのはEcon4にちなんだ名前だ。経済学、教育学だけではなく、他の分野にも広がっていくようにとの願いを込めて選んだ。)



今年1月、声明文の作成に本格的に取りかかった。僕が書いたものをMaxineと僕の博士論文のアドバイザーであるJanet Miller教授に見せ、手を加えてもらった。また、このブログで以前にも紹介した、教育法のエキスパートで、Campaign for Fiscal Equity (v. NY)を歴史的勝訴に導いた弁護士でもあるMichael Rebell教授にも編集を手伝ってもらった。



2月、ようやく完成した声明文を持って、Maxineを訪ねた。そして、信じられないことに、そこにはアクティビストとしても著名な教育学者Bill Ayersとその妻、Bernadine Dohrn (有名なアクティビスト兼法律学者) がいた。Maxineと仲が良いのは知っていたが、あのBill Ayersを前に、僕は胸の高まりを隠せずにいられなかった。



少しの間黙っていたが、僕は無礼と知りつつ、正直にこう切り出した。







せっかくのこのチャンスを逃すわけにはいかない。

Maxineと共に書いたものがある。

是非聞いてもらいたい。







少々声が震えたが、読みきった。そして、BillBernadineが口を合わせるように言った。



I love it!!


そして、僕の意図を見透かしたようにBillがこう付け加えた。



「やろうじゃないか。俺を使ってくれ。」



間もなく、MaxineJanet MillerBill Ayersの署名と、Edu4誕生の背景を説明するメッセージを添えた声明文を、何人かのキーパーソンに送った。Michael Apple, Henry Giroux, Nel Noddings, Bill Ayers, Deborah Meier, Christine Sleeter …。皆、僕が教育学の歴史の教科書で読んだ人たちだ。



反応は僕の想像を遥かに超えていた。一週間そこらで、アメリカだけでなく世界8カ国 (アメリカ、カナダ、スウェーデン、中国、オーストラリア、イギリス、日本、オーストリア) から実に160人もの教育学者たちの署名 が寄せられたのだ。



しかもその署名の充実ぶりには目を見張るものがある。これはJanet MillerBill Ayers、特にMaxineの人徳だろう。Maxineはおそらくアメリカで現存する最も有名な教育哲学者だ。教育哲学は多岐にまたがる教育学の軸的な存在でもあり、数え切れないほどの人々がMaxineの影響を受けている。彼女のビジョンを形にしたものにこれだけ多くの人が賛同するのも無理はない。



結局、数人の友の助けだけでは処理しきれなくなり、声明文を拡散するのを止めなくてはならなくなってしまった。



それから何人の人たちがこのEdu4プロジェクトに協力してくれただろう。現在Project Teamの学生約10名に加え、Maxine Greene, Janet Miller, Robbie McClintock, Bill Ayers, Peter Taubman5名の教授がアドバイザーとして尽力してくれている。現在は教育におけるアクティビズムのためのソーシャルメディアサイトを立ち上げようとしていて、これにもColumbia Center for New Media Teaching and Learningのエキスパート2名及びAdelphi UniversityMatt Curinga教授がテクノロジーを担当してくれている。



そして今、僕はカナダのバンクーバーに向かう飛行機の中でこれを書いている。このプロジェクトにおける僕の良きパートナーとなったAndrewと、一年に一度のアメリカ教育学最大の祭典、American Educational Research Association (AERA) に参加するためだ。着いた当日には別の学会、American Association for Advancement of Curriculum Studies (AAACS) で、Edu4の発表もする。ただ、メインの目的は、Edu4に署名してくれた学者達、そして新たな賛同者たちに直接会って議論を深めるためだ。







ニューヨークの家を出る時、妻の琴栄にこう言ってきた。



「人生の大勝負だと思って行って来る。」





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2012年4月8日日曜日

再 『忙しいあなたへ』

昨日の投稿にもらったコメントの「看護師さん」に連絡を取ろうと思って探していたら、たまたま出てきた詩。ちょうど2年前の投稿だ。Breathe, everyone!!


2010年4月21日 『忙しいあなたへ』


桜はニューヨークでも人々に愛されている。
セントラルパークにて。



学期末、忙しい日々が続いている。

体から抜け出し、独り歩きし始める自分の心。

そんな時はこんな詩が、ちっぽけな自分に気付かせてくれる。



ベトナム出身の禅僧でありキング牧師に多大な影響を与えたティク・ナット・ハン(Thich Nhat Hanh)の翻訳者として知られるSister Annabel Laityの詩だ。 



Breathe! You are alive

              By Annabel Laity



Breathe and you know that you are alive.


 

Breathe and you know that all is helping you.


 

Breathe and you know that you are the world.


 

Breathe and you know that the flower is breathing too.


 

Breathe for yourself and you breathe for the world.


 

Breathe in compassion and breathe out joy.


 


 


 

Breathe and be one with the air that you breathe.


 

Breathe and be one with the river that flows.


 

Breathe and be one with the earth that you tread.


 

Breathe and be one with the fire that glows.


 

Breathe and you break the thought of birth and death.


 

Breathe and you see that impermanence is life.


 


 


 

Breathe for your joy be steady and calm.


 

Breathe for your sorrow to flow away.


 

Breathe to renew every cell in your blood.


 

Breathe to renew the depths of consciousness.


 

Breathe and you dwell in the here and now.


 

Breathe and all you touch is new and real.


 

再開の時 ~Time to begin again~

2009年、8月に始めてから、今までこんなにブログから遠ざかったことは一度もなかった。最後に更新したのが昨年1217日、あれから4ヶ月が経とうとしている。別に病気だったわけではない。あまりにも忙しすぎて気持ちがブログに向かなかったと言った方が正しい。



最近になり、自分より若い世代からあいついで熱いメッセージをもらった。それらがブログ再開のきっかけを僕にくれた。



一人は、NHK 『白熱教室』 に出ている僕の姿を見たという僕の中学校教員時代の生徒。「教室の一番前で熱心に講義に参加する先生に久しぶりに心を動かされました。そして、無性に先生に今の自分の話をきいてほしくなり、勝手ながらまたご連絡させていただきました」 と書いてくれた。そして、大学で毎日本当に充実した日々を送っているという彼は、メッセージの最後にこう書いている。



「高校でもまれて、大学でたくさんいろんなことを感じて、こうして成長できているのも中学の頃のバカな自分がいたからで、小関先生から言われた 「大裕ががっかりしてたよ」 があったからかなーとも思います・・・()



もう一人は、 「教師を目指し、子育てをしながら勉強している」 という小関先生の元教え子。当時は、「根性もなければ、意志も弱く、いつも泣いてばかりいる生徒」 だったという彼女。そんな彼女にとって、このブログで読む小関先生の姿は衝撃的だったそうだ。



「中学生の私には見えていなかった小関先生の教師としての姿を見たような気がした。」



大人になった彼女は、最後に力強い決意を綴っている。



「私は、小関先生に信念を持って目標に向かって努力すること、それは周りに支えられて初めてできることを学びました。その生き方を、小関先生が背中で教えてくださったように、私も私の一生懸命生きる背中で将来子どもに示せる教師になりたいと思っています。」



教師という仕事の面白さは、自分の努力の成果がいつになって表れるかわからないところだ。この生徒から、教師になりたいと思うと相談された小関先生は、「今になってかえってきた」 と、心から喜んでおられた。僕自身、先に紹介した生徒からメールがあった時は、嬉しくてすぐに小関先生にメールを打った。



「へたくそでも一生懸命やっていればいつか必ず返ってくる。」 小関先生の言葉通りです。



小関先生は、彼の生徒との係わりを通して、僕にこう教えてくれる。



先生というのは 巣立っていった生徒たちが 
いつでも帰れる心の家。



新たな道へ進もうとしている二人に、そして、どこでこれを読んでいるかもしれない教え子たちに、心からエールを送りたい。頑張れ。







思い返せば、このブログは小関先生の学びを振り返る場であるとともに、自分の中学校教員時代の生徒たちに対して、決して満足のいくことのなかった自分の教えを継続する唯一の場所でもあった。『白熱教室』 に出たのも、日本人留学生は外人に負けてなんかいないということを行動で見せるため、そして願わくば元教え子たちに自分がアメリカで頑張っている姿を見せたいという想いからだった。こちらでの僕の激しい日々を全て言葉として記録することには限界があるが、また少しずつ分かち合っていきたいと思う。



さて、今更という感じはするが、おかげさまで2011年も 「人生最良の年」 を更新することができた。「激動の年」 と呼ぶにふさわしい一年だった。



2010年の年末にチュニジアで端を発した 「アラブの春」 は瞬く間に近隣諸国に飛び火し、自らの命を顧みずに自由を求めるアラブの民の姿は、世界中に衝撃と勇気、そして革命の機運をもたらした。






アメリカで最初に立ち上がったのはウィスコンシン州の人々だった。2010年のアメリカ中間選挙で就任したばかりの新知事の過激な労働組合解体法案に対し、実に10万人以上の人々が州議事堂に詰め寄せ、デモ運動を繰り広げた。その光景に心動かされた僕自身、もう一つのブログ、 『アメリカ教育最前線』 を通してその模様を日本に必死に伝えた。労働組合が解体すれば、政治において年々力を増しているコーポレートマネーに対抗できる力が失われるの必然、そしてこれは日本にとって決して関係のない話ではないと感じたからだ。



そしてそんな最中に起きたのが東日本大震災だった。ウィスコンシンの人々の多くは、問題の労働組合解体法案が明るみに出たとき、「これこそが我々の瞬間」 と口々に言い、エジプトの人々に彼ら自身も立ち上がったというメッセージを伝えている。だから、3.11のニュースを聞いた時、「今度は自分の番だ」 と僕が感じたのは決して不思議なことではなかった。それから一年、実に様々なプロジェクトにかかわってきた。『世界から日本へ1000のメッセージ』



コロンビア大学での様々な募金活動

日経新聞 3月27日





その中でも、震災直後からかかわってきた取り組みの一つにConsortiumfor Japan Relief (CJR) というものがある。最初は、単にコロンビア大学における様々な復興支援活動に取り組んでいる各団体のリーダーたちが集まって状況報告をする場所だった。それが時の経過とともに、一つの組織となっていった。様々なスクールの学生と教授らが分野や年齢の枠を超えて共に活動する、実にダイナミックな組織だ。



CJRの活動はまだまだ終わってはいない。昨年10月、震災から半年後を機に、政治、経済、災害対策、放射能、メンタルヘルスの5分野から多角的に東日本大震災を検証したシンポジウムに続き、つい今週、4月の4日には震災から一年を期して、東北や9.11後のニューヨークで活躍するの専門家を呼び、メンタルヘルスにフォーカスを置いたシンポジウム(ニュース報道映像)を行った。それと同時に、日本だけでなくタイ、ハイチ、インドネシアを中心とした、近年大災害に見舞われた国の学生を集め、UnitedStudents for Disaster Relief/Recovery という復興支援サイトを立ち上げた。自分たちが展開した復興支援活動を通してそれぞれが得た知識と経験を形として残そうじゃないかという呼びかけから始まった。まずは各国の学生たちがそれぞれの活動を振り返り、そのクロス分析から得られるレッスンと、次に大規模な自然災害が起きた時にすぐにでも使えるノウハウを提起した復興支援専門のウィキだ。



僕らは、このサイトを 「会話の始まり」 だと考えている。今回は、44日のシンポジウムにおけるプレゼンに合わせ、コロンビア大学内での義援金収集活動に焦点を絞ったが、今後、復興支援活動のその他の側面、そして他大学、他団体による活動にまで輪を広げていけたらと願っている。誰でもメンバーシップを申請できるので、一人でも多くの人に会話に参加して頂けたら幸いだ。このような形で、自然災害にまつわる活動のリーダーシップを取っていくのは、災害大国日本に与えられた使命なのではないだろうか。



今回のイベントを行うにあたり、僕はCJRの初代代表という大役を任せて頂いた。メンバー全員が学生や教授という立場から、このイベントは皆が各々の自由な意志に基づき、空き時間を無理やり作って初めて成し遂げられたイベントだった。多くの時間とエネルギーが費やされた。その甲斐あって、当日は日本総領事館の廣木大使を始めとする150名程が会場に訪れ、終了後には多くのポジティブなフィードバックを頂いた。CJRは、あの大震災に何か意味を見出そうとした人々が集まってできた組織だ。きっと、亡くなった方々や今も苦しむ被災者に想いを寄せ、こうして会話を続けていくことに最大の意味があるのではないかと思う。



今回のイベントは、僕に人と人との繋がりの大切さと喜びを再確認させてくれるものだった。実に多くの人が手を貸してくれた。中でも、ウィキの作成に当たり、同じTeachers Collegeの佐伯さんとSIPAの兼松さんが、授業や課題で詰まった過密スケジュールの合間を縫って力を貸してくれた。何度もミーティングを繰り返し、議論を重ねた。何よりもお二人の友情に感謝したい。



傍から見れば、このような活動は大学院生である僕にとって 「余計」 なことなのだろう。でも、もし大学院生の仕事が 「学び」 であれば、余計なことは一つもない。



実は、これら日本の復興支援活動とは別に、更に大きなプロジェクトに現在取り組んでいる。間違いなく、これまでで人生最大のプロジェクトだ。実際、どこから話し始めたら良いのかわからずに今まで書けずにきた部分が大きい。来週火曜日から一週間カナダに学会に行く。その前に少しでも書き始めればと思う。