2009年10月23日金曜日

母の日に

 

美風を抱く母 NYにて

 僕には3つ上の姉がいる。「りさ」の「さ」が言えなかった僕は、幼い頃からずっと「リーリー」と呼んできた。よく遊んでもらい、僕が知らないことや、新しい世界を見せてくれた。小学校の頃から「幼稚園の先生になりたい」と言っていた彼女は、真っ直ぐにその夢を追い続け、立派な幼稚園の先生になった。



 もう10年も前になるのだろうか。その姉が初めての子を授かった。初孫を前に、母はたいそう嬉しそうだった。姉もうちの両親と同じマンションの別室に住んでいるので、毎日のように実家に息子を連れて来た。特に母は、せっせと初孫の世話をし、それはそれは可愛がった。



 そんな幸せそうな母を前に、僕は言った。



「子どもを産んだことがリーリーの最大の親孝行だね。」



 一瞬にして真顔になった母が言った。



「違うわよ。あの子が自分のやりたいことを見つけて、それを一生懸命やっていることが親孝行なのよ。」






 今年の母の日、母に国際電話をかけた。短い電話だったが、自分が今、幸せを噛みしめながら夢を追い続けていること、36になった今でも、年を重ねる毎に人生が良くなっていることを伝えた。

 
 電話越しの母は、それはそれは嬉しそうだった。

1 件のコメント:

  1. 大裕さんのお母さんの言葉、
    うるうるしてしまいました。
    子どもを産まなかった私は親不孝だな~と、
    日頃感じることしばしば…。

    弟夫婦の子どもたちに囲まれ、
    孫に注ぐ愛情をみていると、
    高齢になった両親の希望になっているんだなと。
    両親は、孫達と一緒に田植えや稲刈り、野菜作り…は、
    これまでにない、全く違う喜びを感じているようです。
    AKI

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