2011年6月18日土曜日

"I love you."

 この場に何度か登場しているMr. Walker…。僕の高校時代の英文学の先生である以上に、自分の人生を変えてくれた、生まれて初めての人生の先生だ。あの時彼に出会っていなければ、僕は日本の教育に疑問を持ち、教育の道を志すことはなかったかもしれない。



 Mr. Walkerは、書くという行為を通して生き方さえも教えてくれた。



 同じ意味を持つ言葉でも、構成部分やその言葉の歴史的背景から微妙なニュアンスの違いが生まれる。そして数ある選択肢の中から、常に最善を尽くして次の言葉を選ぶ…。その繰り返しによって綴られるのは、その人の生き様だ。







 『いつの日か ~繋いでいくこと(完)~』 でMr. Walkerの脳の癌が再発したことを紹介してからもうすぐ一年になる。1ヶ月に一度ほど電話してきたが、このところ会話もうまく続かなくなった。



 先週、電話をした。いつものように奥さんのPhillisが電話に出た。キモセラピーはやめたが、旦那は変わらず元気に闘っていると言う。



 おそらくMr. Walkerがすぐ隣にいるのだろう。どこか気丈に振舞っているような気がしてならなかった。



 Mr. Walkerが電話に代わると、僕はいつも通り、自分の勉強のこと、家族のことなどを話したが、それに対して、彼は相槌をうつのが精いっぱだった。



 疲れさせてはいけないと思い、僕は手短に電話を切ろうとした。



 最後に、Mr. Walkerが苦しそうに言った。







"I love you."







迫りくる恩師の死を悟った瞬間だった。



来週、家族を連れて再び彼のもとへ行く。

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