2010年8月29日日曜日

再投稿: 君たちに伝えたいこと3 ~Responsibility~

 

 昨日、KAPLAN[1]で生徒にTOEFLを教えていた時、responsibilityという単語に出くわした。

 生徒に、 「この単語の意味知ってる?」 と聞くと、知らないと言う。 「責任」 という意味なのだが、何か良い教え方はないものかと思い、いつものようにこの単語を分解してみることにした。

 Responsibility は単純に大きく分けると、 response と ability に分解することが出来る。 Response は「応答」 、 「反応」 等の意味を持つ。いずれにせよ、漢字の 「応」 という字がその意味に最もふさわしいイメージを持つように思う。そして ability は 「能力」 という意味。

 おや? Responsibility… 応える、能力?それが 「責任」? 予想外の発見に僕は驚くと同時に不思議な説得力を感じていた。その場は responsibility の持つ、 「責任」 という意味、そしてそれを構成する要素を教え、それらの関連性については僕と生徒の次回までの宿題とした。

 家に帰った僕は早速、自分の持つ一番大きな英英辞典を開いた。それによると、 responsibility の元となる respond (応える) という単語はラテン語の respondere という単語に語源を持つ。

Re は 「返す。」
Spondere は 「約束する」 という意味をそれぞれ持つ。

つまり、 respond は元々、 "to promise in return" (約束をもってお返しをする) という意味なのだ。よって、 responsible は 「約束をもってお返しをすることが出来る」 という意味を持ち、その能力を持つ者を描き出す。

そして、論理的には responsibility の持つ 「責任」 とは、 「約束をもってお返しをする、その能力」 ということになるのだが、これがそうではないのだ。面白いことに、それは 「能力」 自体を指すのではなく、その能力を持つ者に 「課せられるもの」 を指すのである。

僕の持つ辞典には responsibility の説明の一つとして次のようなものがある

“a particular burden of obligation upon one who is responsible”
(Random House Webster’s College Dictionary,
1997, NY: Random House, Inc.. p.1107). 

Responsibleの意味を踏まえて訳すと、このようになる。

「約束をもってお返しをする能力を持つ者に課せられる、ある種の義務の負担。」

 能力を持つからこそ義務を背負う。こうして語源を考えると、それは世間一般に考えられている、 「責任がある」 という意味が持つ、外部から強制的に背負わされるイメージとはかなり異質なものであることが分かる。それは本質的に自発的であり、恩恵を受けた人やものに対する約束であると同時に、何よりも自分自身に対する約束、けじめであるように思う。





 教育を受ける機会を得た者として、親や友人に恵まれた者として、人や大地の温もりに触れた者として、学生として、教育者として、大人として、母親として、父親として、女として、男として、人間として、そして一つの生命として、僕達が持つ 「責任」 とは何なのだろうか。僕達はどんな素晴らしいことを約束し、お返しすることが出来るのだろうか?そこには、しばしば 「責任」 とは遠いところに位置付けられる 「自由」 が顔を覗かせているように思う。

1999年作

[1] KAPLANとは自分が教員になる前に努めていた留学予備校。留学を希望する社会人や学生に英語(TOEFLやTOEICなど)を教えていました。

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