2009年11月13日金曜日
私の夢④ ~小野寺愛さんから~
はじめまして。小野寺愛といいます。
年に3回「地球一周の船旅」を企画しているNGO、ピースボートで働いています。
大裕のパートナー、琴栄は大学時代からの大切な友人です。大裕との出会いは10年前、大裕に出会ったばかりの琴栄から「運命的な出会いをした!」と留学先まで連絡をもらったのを覚えています。その後紹介してもらった大裕は、琴栄のことばどおり素敵な人で、笑ってしまうくらいにロマンチストで、情熱あるまっすぐな教育人でした。私は、大裕が中学校の先生時代に生徒さんたちにあてて書いた文章がすごく好きです。先生対生徒だからといって「上から目線」にならずに、対等な大人に語りかけるように投げかけたまっすぐな言葉の数々。へたな説教をするよりもずっと心に響き、彼らが本当の大人になるのに一役も二役も買っただろうなと思います。
その、かつての生徒さんたちも見ているという大裕のブログに「まだ将来どうするかを決めていない彼らが、この場を使っていろんな大人の夢と人生に出会えるように、文章を投稿してほしい」と誘ってもらい、困りました。私の歩いてきた道は自分のブログ(「長い!とツッコミが入りそうな自己紹介」(http://ameblo.jp/sunday0106/entry-10006458921.html)にあるとおりですが、「夢」を語るとなると、すごく難しい!
私にも、これまでに数えきれないくらい、たくさんの夢がありました。ジャーナリストになりたかったり、タヒチに留学したかったり、世界の貧困をなくしたかったり。でも、最近、かつての自分が「夢」だと思っていたものは全部「目標」でしかなかったのかなと思うようになりました。夢というのは、達成する・しないではかれるような短期的なものではなく、もっと自分の根本にある「生きかたそのもの」ではないかと思うのです。
ガンジーは、“Be the change you wish to see in the world.(あなたが見たいと思う世界の変化に、あなた自身がなりなさい)”と言いました。「こうなったらいいのにな」と思う変化がどこかから訪れるのを待つのではなく、自らがその変化の一部になればいいじゃないか、という意味のことばです。大学を卒業して、待遇はいいけれど仕事の意味を見いだせない職場で働いていた頃の私は、このことばを聞いて衝撃を受けました。他力本願で何かが起こるのを待ったり、目の前にある状況に文句を言ったりすることは、誰のためにもなりません。そう気づき、1年半で会社を辞め、待遇は悪いけれど自分の気持ちにまっすぐでいられる今の職場に就職しました。「アフリカで出会ったあの子たちのために学校を建てよう」「パレスチナの友人のために、医療支援をしよう」という風に、「こうなったらいいのにな」という世界の出来事に対して日々自ら働きかけることができる職場です。小さな変化しか起こせなくても、自分が望む変化のために自ら動くことができるというのは、まさに夢のような生きかただと思いました。
ガンジーはまた、“There is no way to peace. Peace is the way.(平和への道はない。平和こそが道なのだ)”とも言いました。ガンジーにとっては究極の夢であったはずの「平和」についてのこの言葉。私は、これをそのままこんな風に置き換えて共感しています。“There is no way to your dream. Your dream is the way.(夢への道はない。夢こそが道なのだ)”
私は現在、2児の母です。1人目の桃(もも)は2歳半、2人目の杏(あん)は2週間前に生まれたばかりです。子どもたちは、とてもまっすぐです。先のことばかり考えて悩んだりすることなく、「今、ここ」を楽しむのがとても上手。それでいて、彼女たちは今からなら何にだってなれる、無限大の可能性を秘めた存在です。そんな子どもたちと一緒にいると、自分が何になりたいとか、自分がどこに行きたいとかというような自己実現欲はものすごく小さくなり、代わりに、子どもたちの生きていくこの社会のことがとても気になるようになりました。だから今の私の夢は、子どもたちがどれだけ「この世界は素晴らしい場所だ」と感じることができるか、少しでもいいからそれに貢献できる生きかたをしていたい、ということに尽きます。
日本でテレビや新聞に登場するニュースからは、世界がどれだけ素晴らしい場所であるかということよりも、世界にどれだけ問題があるかということばかり伝わってくるようです。でも、私は思うんです。大人が子どもに「温暖化で地球が危ない。君たちの未来は明るくない」なんてことを伝えるのは罪ではないかと。実は太陽光は、全人類が必要とするエネルギーの1万倍以上の熱を地球に届けてくれているのだし、水素エネルギーも開発が進んでいる。問題は、地球にではなく、人間の作った不完全なシステムにあるのです。だったら大人は、素晴らしい地球の力を子どもたちと一緒にみつめて、どうやったらそれを生かせる社会を作れるかを考えたらいい。それに、「21世紀になっても紛争も貧困もなくならない」という悲惨さだけを伝えても、子どもたちにはどうしようもありません。それなら、実は世界の軍事費のほんの1割でも削減することができたら世界中の子どもたちが学校に行けるようになることを伝えて、じゃあ自分たちはどう動いたらいいかを子どもと一緒に考えたい。
「大人が”自分たちの時代は終わった、次は若い君たちの時代だよ”というのはポジティブなようでいて、実はすごく無責任」とカナダの環境活動家、セヴァンが話していたことを思い出します。12歳の時に友達と一緒にお金を貯め、リオデジャネイロで行われていた環境サミットに乗り込んで、世界中の政治リーダーたちの前で伝説的なスピーチをした彼女は、「あのとき、私たちのやりたいことを信じて、応援して、一緒に動いてくれた大人たちがいなかったら、結局自分に夢があっても、何も実現できなかったはず」と話していました。大人には、子どもたちの好奇心や「やりたい」「知りたい」を応援するために努力し続ける責任があると思うのは、私も同じです。
(★セヴァン・スズキのスピーチ: http://www.youtube.com/watch?v=C2g473JWAEg)
私は、子どもたちが大自然に触れたときや新しい発見に出会ったときの、「わあっ」という顔がとても好きです。地球一周の船旅を企画し、これまでに地球を船で6周分旅をしてきた私には、実は世界はそんな「わあっ」に満ちた場所であることを知っています。ひとりでも多くの人がそう感じることができるように、7年前からピースボートに関わり、地球一周の船旅の企画を作り続けてきました。母になってからは、小さな子どもたちでもその体験ができるようにと思い立ち、船の上に「ピースボート子どもの家」という保育園を作りました。この春、さっそく私自身が2人の子どもたちと一緒に地球一周に参加し、親子で「わあっ」の体験を重ねてきました。
(★「ピースボート子どもの家」サイト: http://www.peaceboat.org/info/kodomo/index.html)
(★「親子で船旅」レポート: http://ameblo.jp/sunday0106/entry-10385919992.html)
海の上の保育園を作った今、次なる夢は、小学生になった子どもたちがいかに暮らしの中で「わあっ」を感じることができるかです。とくに、学校を終えたあとの放課後を子どもたちがどう過ごしているかがとても気になっています。共働きの親がどんどん増えている今、既存の学童保育だけで子どものニーズが満たされているわけがありません。今2歳半の娘が小学生になるまでに、毎日の学校が終わったら彼女が走って通いたくなるような学びの場を見つけたい。もし地元にそんな場所がなければ、子どもたちがワクワクしてやまない「放課後」を自分たちで作りたい。友達と一緒に、海や山を身近に感じて、からだをいっぱいに使いながら学べる場を作りたい。そう思って、少しずつそのための調査と仲間作りをはじめています。(湘南、とくに逗子方面で一緒にそんなことをできそうな方、ぜひ声をかけてください!)
海の上に最高の保育園を作ったって、日本中の子どもたちが参加できるわけではありません。自分の地元に素敵な「放課後」プログラムを作ったって、その恩恵を受けることができる人数が限られていることもわかっています。でも、そんな風にして、少しでも子どもにとって「いい変化」の側にいられることこそが私の望む「夢の生きかた」なんだと思います。(とはいえ、いちばん大切にしたいのは、そんなささやかなプロジェクトの成功よりなにより、「世界一のお母さん」であることです。世界一の平和活動家よりも、革命家よりも、いつだって自分の子どもの味方でいられる「世界一のお母さん」がスゴイと思う!)
・・・大裕に言われるがままに「夢」についていろいろ書いてみましたが、結局はいい妻、いい母、いい人間として、気持ちよく生きていたい、自分の夢はただそれだけなのかなと思います。今のところ、そんな夢の人生を自由に生きていられることに「カミサマありがとう!」と感謝の気持ちでいっぱいです。
(★国際交流NGOピースボート・a class="fixed" href="Fhttp://www.peaceboat.org/)" target="_blank">Fhttp://www.peaceboat.org/)
(★小野寺愛ブログ「船乗り日記」・a class="fixed" href="Fhttp://ameblo.jp/sunday0106/)" target="_blank">Fhttp://ameblo.jp/sunday0106/)
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小野寺愛さん、はじめまして!
返信削除ガンジーの「Be the change you wish to see in the world」という言葉、非常に心に響きました。Be the change、とってもいい言葉ですね。
それから、セヴァン・スズキのスピーチ、初めて見ました。12歳の少女とは思えない、心を揺さぶるスピーチでした。ご紹介頂いてありがとうございます。
小野寺さんはピーズボートの活動を通じて、Be the changeを実践されていることがとっても伝わってきました。やはり、大人の姿勢が子供に与えること、与えられることって大きいですよね。
私もBe the changeになれるよう、進んで行こう!と勇気をもらいました。ありがとうございました。
佐藤新吾