2011年8月24日水曜日

救世主 ~ 丸 5 ~

丸がいたのは3年B組。そう、昨夏この場で紹介した  のクラスだ。



丸の学年は、2年生の時にいろいろな問題があったため、3年生に上がる時にもクラス替えをすることになった。僕は教員1年目に当時2年生だった丸の学年に副担任として入り、3学期には病欠となった学年主任の代わりにA組の担任をし、次の年はそのまま同じ学年で3年生の担任をやらせてもらえることになった。



他の学校の先生は決まって、「お前の学校はとんでもない人事をするな」 と僕に言った。普通、問題のあったクラスや、受験を伴う大事な3年生を新採に任せるようなことはしないからだ。僕が期待されていたのもあるかもしれないが、学年に人材がいなかったのも確かだ。



クラス編成…。おそらく教員をしたことのない多くの人にとっては、子どもたちのクラスがどのように決められるのかは、未知なることの一つなのではないだろうか。もはや教員ではない自分の立場を活かして、遠慮なく書くことにする。



基本的には、生徒の性別に加え、学力が中心となる。学力が明らかに偏っていると、授業の進む速度が変わってきてしまうからだ。前の学年で行われた最後の学力テストか何かの点で一列に並べられた生徒の情報カードを、クラスの数だけ一気に振り分けていく。「A, B, C, D, E, E, D, C, B, A…」 といった感じだ。



大変なのはそれからだ。「公平」 なクラス編成にするためには、考慮しなくてはならない点が幾つもある。



それらの項目には例えば、ピアノ、欠損/生活保護、リーダー、不登校などがある。



最初の、「ピアノ」 というのは、多くの読者にとって意外かもしれない。たいていの中学校では、合唱コンクールのような音楽的な行事を行う。その時、クラスにピアノを弾ける子がいないと困ってしまうからだ。



欠損/生活保護というのは、字の通りだ。親が離婚していたり、どちらかが亡くなっている家庭、また生活保護を受けている家庭の子は、ニーズが高かったり、事務手続きが大変だったりする。だから偏りがないように各クラスに分散させる傾向がある。「不登校」 も同じ理由で分けられることが多い。



どのクラスにもリーダー格の生徒は必要だ。普通は男子1、女子1を各クラスに保障する。ただこれは、あてにならないことが多い。教員の価値観によっても誰を 「リーダー」 と見なすかは変わってくるし、多くの教員は、既に出来上がっている 「優等生」 を欲しがるからだ。優等生 についてはさんざん書いてきたからここでは書かない。でも、小関先生にとっては、いわゆる 「優等生」 はリーダーにはあてはまらない。だから小関先生のクラスには、傍から見れば扱いにくい、癖のある子が多く集まり、「リーダー」 はいないことが多い。ただ、小関先生本人からしてみれば、それはダイヤモンドの原石の集まりだったりする。



そこまで振り分けたところで初めてクラス編成の土台ができるといっても良いかもしれない。本当の駆け引きが始まるのはそこからだ。たいていは一番最後の項目として、特別枠が設けられている。いわゆる 「問題児」 だ。



丸の代の3年時クラス編成には、当時学校の生徒指導主任だった小関先生も参加することになった。それによって、クラス分けは皆の予想以上のスピードで進むことになった。



簡単に言えば、小関先生がそれら特別枠の多くを容赦なく僕に振ったからだ。



「こいつはおまえ。こいつやこいつもおまえ…」 といった感じだ。



そして最後に、「その代わりにこいつもおまえ。



そう言って僕の救世主としてあてがわれたのが丸だった。



(続く…)

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